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2022.10.12

萎縮性胃炎、慢性胃炎を「経過観察」してはいけない理由

大阪本町胃腸内視鏡クリニック 院長の藤田です。

今回のテーマは「萎縮性胃炎」「慢性胃炎」です。

つい先日も外来に40代の女性が来られました。そして「毎回萎縮性胃炎と書かれるんです」、と。

皆さんは、その理由が分かりますか?

 

萎縮性胃炎とは?

そもそも 萎縮性胃炎とは何なのでしょうか?

それは「胃の粘膜が萎縮した状態」という意味です。それはそうですよね。では、胃の粘膜が「萎縮」したというのはどのような状態なのでしょうか?

正常なきれいな胃は、ピンク色で艶のある襞がたくさんあります。

 

 

 

それが、慢性の胃炎を起こすと粘膜が荒らされて、ざらざらになり、そしてこの襞が消えてしまうのです。それが「萎縮」した状態です。

この写真でいうと、画面の手前は襞がありますが、奥のほうは襞が消えてしまっています。これを「萎縮性胃炎」といいます。

例えばバリウム検査を受けた時や、胃カメラを受けた時に、襞がなくなっていると「萎縮性胃炎」と指摘されます。

 

萎縮性胃炎の原因

ではこの萎縮性胃炎の原因は何でしょうか?

それはほとんどが「ピロリ菌」感染による慢性胃炎が原因です。

ピロリ菌は2~5歳の子供の時期に、口から胃に入り込みます。そして胃に入り込んだ後は、自然に排除されることなく、慢性胃炎を起こします。そして粘膜を萎縮させるのです。

他にも自己免疫性胃炎などがありますが、ほとんどの原因はピロリ菌です。

そしていったんピロリ菌によって粘膜が削られてしまうと、除菌をしても粘膜は元の状態には戻らないのです。つまり、除菌成功して、ピロリ菌がいなくなっても「毎回、萎縮性胃炎と指摘」されてしまうのです。

ですので 萎縮性胃炎と指摘された方は、必ずピロリ菌の感染について調べておきましょう。ちなみに、さきほどの40代の女性は、バリウムで毎回萎縮性胃炎を指摘されているものの「経過観察」となっており、胃カメラもされておらず、ピロリ菌も調べられていませんでした。そして当院で胃カメラを受けると、案の定胃炎があり、ピロリ菌検査も陽性反応でした。胃がんになっていなかったのは幸いでした。

 

萎縮性胃炎はどうしたらいいのか?

いったん萎縮した粘膜は元に戻るわけではありませんが、かといって放置するわけにはいきません。

まずピロリ菌に現在感染している人はピロリ菌を除菌する必要があります。そして、これ以上胃炎を悪くさせないことが大事ですし、それによって胃がんになるリスクをこれまで以上に高めないことが期待できます。

そして除菌に成功した人は、定期的な「胃カメラ」を受けておいてください。

バリウムではありません!ここは注意点です!

 

なぜバリウムではなく、胃カメラなのか?

いくつか理由がありますが、最大の原因は「胃がんを見逃さない」ためです。

萎縮した粘膜は胃がんが起こりやすい粘膜です。胃がんは早期の段階があり、それを1~2年放置しておくと進行した状態になると考えられています。

早期の胃がんというのは、粘膜がわずかに隆起したり、へこんでいる。または赤くなったり、白くなっている、といった変化で現れます。これはバリウムではほとんど分かりません。がん細胞が大きくなって、つまり進行してからバリウムで分かるようになります。しかし、それでは遅いのです。

できるだけ早く見つけて、治療する。早期発見、早期治療することによって、胃がんの予後は大きく改善されます。

ピロリ菌を除菌しても、5歳までに移ったピロリ菌の影響ですでに胃炎は進行してしまっています。

除菌することで、それ以上胃炎が悪くならないようになり胃がんになるリスクは高めないようなったものの、すでに萎縮性胃炎があると胃がんのリスクはどうしても残ってしまいます。

また、「胃がんであるか」の診断は、最終的には胃カメラ検査で行う組織検査になります。バリウムは白黒の写真を見るだけですが、胃カメラでは怪しい所見があればその場で組織検査ができるところも大きく異なります。

そして 最大の問題は、バリウムで慢性胃炎だと「経過観察」と評価されてしまうのです。

これは内視鏡医師からすると、とんでもないことなのです。萎縮性胃炎があった時点で胃がんのリスクが高く、経過観察している場合ではありません。

私もこれまで 何人もの「慢性胃炎ではなく進行胃がん」だったという患者さんを見てきました。こんなことは胃カメラではまず考えられないことです。逆に言えば、それだけバリウムの診断は難しい、ということでもあります。

 

3年前にあった出来事

60代の男性の話です。その方は毎年バリウムを受けられていました。そして慢性胃炎を指摘されて、胃カメラをしました。結果はかなり進んで慢性胃炎で、ピロリ菌も陽性でした。

そこで除菌治療を行い、無事成功しました。

「1年後に胃カメラしておきましょうね」

その患者さんは2年来ませんでした。そして2年後の9月に、胃もたれを自覚されて来られました。

「久しぶりの胃カメラですね。どうされてたんですか?」と尋ねると、「毎年8月にバリウムを受けていて、この前も異常なしで、昨年も異常なしだったんで。でも最近胃もたれするから、胃カメラしておこうか」と。

除菌後で、しかも毎年バリウムで異常なし。大きな問題はなさそうかな、と胃カメラをしてみると…

すでに胃の半分ががんで覆われていました。すでに進行した胃がんで ステージ3。

それから彼の大変な闘病生活は始まりました。

「なぜ胃カメラをしてなかったのか…。あれだけ忠告していたのに」と同時に

「なぜバリウムでひっかけてくれなかったのか」

すでにあとの祭りです。ただその患者さんは自覚症状が取れなかったので、当院に胃カメラにきてくれたので良かったといえます。もっと我慢強く病院に来ていなかったら… ぞっとします。

最後に

慢性胃炎、萎縮性胃炎は、胃がんのリスクがあるため 決して「経過観察」してはいけません。

バリウムではなく胃カメラを受けておきましょう。胃カメラで胃がんを予防できるわけではありませんが 

すくなくともバリウムより早期に見つけることは可能です。

少しでも胃がんになる人が少なくなるように、胃がんで苦しむ患者さんとその家族が少なくなるように、今日も内視鏡を握ろうと思います。

 

【大阪本町胃腸内視鏡クリニック】 

堺筋本町駅前にある内視鏡専門クリニック 2022年オープン

森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの2号店となります。

鎮静剤麻酔、鎮痛剤を使用した無痛内視鏡(寝ている間に胃カメラ、痛くない大腸カメラ)を行っています。大腸にポリープがあれば、その場で切除(日帰りポリープ切除術)も行っています。忙しいサラリーマン、主婦の皆さんのために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。

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