がん家系について動画で解説
がん家系
「親や兄弟にがんの人がいると自分もがんになりやすいのか?」
これは普段の診療でよく聞かれる質問です。
いわゆる「がん家系」とは何か、該当する場合に注意すべきことを、消化器内科専門医が解説します。
がん家系とは
がん家系とは、親・兄弟・祖父母など近い血縁者にがん患者が多い家族のことを指します。
がんが遺伝する可能性もありますが、生活習慣や環境の影響もあるため、必ずしも遺伝とは限りません。
がんはなぜ発生するのか?
私たちの体は37〜40兆個の細胞で構成されています。
細胞は分裂と増殖を繰り返し、不要な細胞はアポトーシス(自然死)により排除されます。
遺伝子の変異によってアポトーシスや細胞増殖の制御が働かなくなると、細胞が異常に増殖し、腫瘍になります。
悪性腫瘍が「がん」です。
がんには「遺伝的要因(先天的)」と「生活習慣や環境因子(後天的)」の両方が関与します。
がんの約90%は後天的要因によるとされ、遺伝によるものは約10%です。
後天的な発がん原因の一例
- 喫煙
- 多量の飲酒
- 野菜不足などの偏った食生活
- 慢性的なストレスや睡眠不足
- 感染症(ピロリ菌→胃がん、B型・C型肝炎ウイルス→肝細胞がん、ヒトパピローマウイルス→子宮頸がん)
- 放射線、アスベスト、食品添加物などの発がん性物質
日本人の約2人に1人が一生のうちにがんを経験し、3人に1人ががんで亡くなる時代です。
遺伝するがんの特徴とは?
遺伝性のがんは、特定の遺伝子異常が親から子へ50%の確率で受け継がれます。
例として以下のがんがあります。
- 大腸がん:FAP(APC遺伝子)、リンチ症候群(MLH/MSH遺伝子)
- 乳がん・卵巣がん:BRCA1/2遺伝子(アンジェリーナ・ジョリーが予防摘出で話題)
遺伝性がんを疑うサイン
- 親や兄弟姉妹に同じ臓器のがんが複数人いる
- 50歳未満でがんを発症した家族がいる
- 1人で複数のがんを発症した
- 家系に乳がん・卵巣がん・大腸がんが多い
このようなケースでは、遺伝子カウンセリングや検査の対象となることがあります(専門機関にて実施)。
遺伝性腫瘍と家族性腫瘍の違い
遺伝性腫瘍
生まれつき遺伝子に異常があり、がんのリスクが高い。
家族性腫瘍
遺伝だけでなく生活習慣や環境の共有によって似た疾患が現れる。
「がん家系」はこの両者を含みますが、意味合いが異なるため区別して考える必要があります。
がんを予防する生活習慣とは?

- 禁煙
- 飲酒を控える
- 野菜やキノコなど食物繊維を積極的に取る
- 赤身肉・加工肉の摂取を控える
- 適度な運動と適正体重の維持
- 定期的ながん検診を受ける
- ピロリ菌検査と除菌治療(胃がん予防)
まとめ
がん家系であっても、遺伝性がん(遺伝子異常)に該当するのは全体の1割程度とされており、必要以上に心配する必要はありません。
多くのがんは生活習慣の改善で予防・早期発見が可能です。
当院では、がんリスクの高い方への相談や検査も行っております。気になる方はお気軽にご相談ください。
がん家系Q&A
がんは遺伝するのですか?
がんは環境要因や生活習慣も大きく影響しますが、全体の約5〜10%は遺伝性(家族性がん症候群)に関与する遺伝子変異が原因とされています。多くのがんは遺伝的素因よりも、後天的な要因の影響が大きいと考えられています。
家族にがんの人がいるだけで自分もリスクが高いですか?
家族にがんの方がいること自体は必ずしも遺伝性がんを意味しません。ただし、同じ種類のがんが複数世代で発症している場合や、若い年齢で発症している場合は、遺伝性の可能性が高くなることがあります。
どんな種類の家族性がん症候群がありますか?
代表的なものには、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)、リンチ症候群、家族性大腸腺腫症(FAP)などがあります。
遺伝子検査とは何ですか?
遺伝子検査は、血液などを用いて遺伝子の病的変異を調べ、がんの発症リスクが高いかどうかを確認する検査です。通常は遺伝カウンセリングと併せて行われます。
遺伝子検査は誰が受けるべきですか?
家族内で同じがんが多い場合、若年発症、同じ人に複数のがんが発症している場合など、遺伝性がんの可能性が考えられる方は、医師と相談のうえ検査を検討します。
遺伝子検査の費用は保険適用されますか?
遺伝子検査を実施している医療機関は限られています。一部の検査は保険適用となる場合もありますが、検査内容や病歴によって異なるため、事前に医療機関での確認が必要です。
遺伝性がんと通常のがんの違いは?
通常のがんは後天的に遺伝子変異が起こることが多いのに対し、遺伝性がんは生まれつきの遺伝子変異によって発症リスクが高い体質です。遺伝性がんでは若い年齢で発症する傾向があります。
子どもにも遺伝しますか?
多くの遺伝性がん症候群は常染色体優性遺伝で、変異を持つ親から子どもへ約50%の確率で遺伝する場合があります。
胃がんは遺伝しますか?
胃がんの多くは遺伝よりも、ピロリ菌感染や生活習慣(塩分の摂りすぎ、喫煙など)といった環境要因によって発症します。中でも最も重要なリスク因子はピロリ菌感染です。遺伝性胃がんは全体の数%程度とされています。
大腸がんは遺伝しますか?
大腸がんのうち、明確な遺伝的原因によるものは約5%とされています。ただし、特定の遺伝子変異が見つからなくても、家族に患者がいることでリスクが高まる「家族集積性」を含めると、約20〜30%に遺伝的背景が関与していると考えられています。一方で約70%は家族歴と関係なく発症します。
食道がんは遺伝しますか?
食道がんが直接遺伝することは稀です。日本人に多い食道扁平上皮がんでは、飲酒や喫煙といった生活習慣に、遺伝的体質が強く影響します。特にアルコールを分解する酵素(ALDH2)の働きが弱い体質は、食道がんの重要な遺伝的リスク因子とされています。















