森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック 院長の川口です。
今回のテーマは「逆流性食道炎の治療」です。
「逆流性食道炎」の病態から見ていきましょう。
口から入った食べ物は歯で砕かれ、飲み込まれた後に胸の中心あたりを縦断する食道を通って心窩部(みぞおち)あたりから胃へと進んでいきます。胃では「胃酸」が食べ物の消化を助ける働きをしながら、食べ物を次の小腸へと送り込みます。
逆流性食道炎の病態の基本はこの「胃酸」が文字通り、胃から食道へ逆流することにより起こります。逆流した胃酸が食道の粘膜を傷害することにより症状を引き起こします。
食道へ逆流する原因は?
食道と胃のつなぎめには「下部食道括約筋」という逆流を防いでくれる筋肉があります。様々な原因によりこの筋肉が弱くなったり、防いでくれる力よりも胃内の圧力が高くなったりすると逆流が起こります。
- 【食道裂孔ヘルニア】
食道裂孔ヘルニアは食道と胃のつなぎめが物理的にお腹側から胸側(上方向)へせりあがった状態で、本来の逆流防止機能が弱まるため胃酸が食道に逆流しやすくなります。
逆流性食道炎の治療、どんなものがあるの?
逆流性食道炎への治療アプローチは①お薬による治療と②手術による治療があります。
- 【お薬による治療】
前述のとおり、「胃酸の逆流」が逆流性食道炎の一番の原因になります。ですので、胃酸の分泌を抑える薬(制酸剤)が有効です。多くの場合は4-8週間服用すれば効果が判定できます。
制酸剤では効果が乏しい場合、逆流を防いでくれる「下部食道括約筋」の能力を高める効果を狙った薬や胃の動きを良くして胃内の圧力を下げる効果を狙った薬を併用することもあります。
- 【手術による治療】
お薬を使った治療で効果が得られない場合には手術を検討します。
大きな食道裂孔ヘルニア(前述した食道と胃のつなぎ目が物理的にせりあがった状態)のある場合は外科的に「噴門形成術(ふんもんけいせいじゅつ)」という手術が必要になる場合があります。
※Topic 令和4年に「内視鏡的逆流防止粘膜切除術」が保険適応となりました。
この治療法は従来のお腹を切ったり穴をあけたりして行っていた外科的手術(噴門形成術)ではなく、検査でつかう胃カメラを用いて行う手術です。
まだ保険適応になったばかりで実際に行っている施設は限られますが、難治性の患者様へ光明を投げかける治療法となる可能性が期待されます。
※注意※ 外科的な手術であっても内視鏡的な手術であっても、合併症のリスクはゼロではありません。これら治療の対象となるのはお薬の治療でコントロールできない方、専門的な検査をうけて治療が期待できると考えられる方に限られるため、希望して必ず受けられる治療法ではありません。ご興味のある方は診察時にお尋ねください。
自分でできることはありますか?
日本では食生活の欧米化やピロリ菌感染率の低下(未感染の方は胃酸分泌が多い)により逆流性食道炎の患者さんが増加しています。
予防には次のような生活習慣に気を付けることが大切です。
- 日常生活で気を付けたい生活習慣
- タイトな服(お腹の締め付けが強い服)をさける
- 前かがみの姿勢をさける
- 食べすぎない
- 食べてすぐ横にならない(2-3時間)
- 寝る3時間前は食事をとらない
- 体の右側を下にして寝ない
- 頭を高くして寝る
- 体重を減らす(適度なダイエット)
- 禁煙
予防のためにさけたい飲食物
- 脂っこいもの
- 甘いもの
- アルコール
- チョコレート
- コーヒー
- 炭酸飲料
- 柑橘類
大阪本町胃腸内視鏡クリニック
堺筋本町駅前にある内視鏡専門クリニック 2022年オープン森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの2号店となります。
鎮静剤麻酔、鎮痛剤を使用した無痛内視鏡(寝ている間に胃カメラ、痛くない大腸カメラ)を行っています。
大腸にポリープがあれば、その場で切除(日帰りポリープ切除術)も行っています。忙しいサラリーマン、主婦の皆さんのために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。