はじめに|ピロリ菌は「知らないうちに感染している」ことが多い菌です
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、日本人の胃の病気、とくに慢性胃炎・胃潰瘍・胃がんと深く関係している細菌です。近年テレビやインターネットで耳にする機会が増えましたが、「自分は大丈夫」「症状がないから関係ない」と思っている方も少なくありません。
しかし実際には、ピロリ菌に感染していても自覚症状がほとんどないケースが多く、気づかないまま長年胃に炎症が続いていることがあります。ピロリ菌感染を放置すると、将来的に胃がんのリスクが高まることが分かっており、早期発見・早期除菌が非常に重要です。
本記事では、大阪本町胃腸内視鏡クリニックの消化器内科医が、
・ピロリ菌とは何か
・感染経路と日本人の感染率
・症状と放置するリスク
・正確な診断方法
・除菌治療の流れと副作用
・除菌後に必要なフォロー
までを、医学的に正確かつ一般の方にも分かりやすく解説します。最後には、胃カメラ検査につながる重要なポイントや、よくある質問もまとめています。
ピロリ菌とは?|胃の中に住みつく特殊な細菌
ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息するらせん状の細菌です。通常、胃の中は強い胃酸のため細菌が生きられない環境ですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を使って尿素からアンモニアを合成し胃酸を中和することで、生き延びることができます。
この菌が胃の粘膜に長期間感染すると、慢性的な炎症が起こり、以下のような病気の原因となります。
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・慢性胃炎(萎縮性胃炎)
・胃・十二指腸潰瘍
・胃がん
・胃過形成ポリープ
・胃MALTリンパ腫 -
特に日本では、胃がんの多く(約95%)がピロリ菌感染と関連していることが知られています。
ピロリ菌の感染経路|いつ、どこで感染するの?
主な感染経路
ピロリ菌の感染は、主に幼少期に起こると考えられています。大人になってから新たに感染するケースはまれです。
主な感染経路はいまだにはっきりしていません。以下のような経路が推測されています。
・井戸水などの未処理水の摂取(過去)
・家族内感染(親から子へ)
特に、離乳期や幼児期に親が口移しで食べ物を与えることで感染する可能性が指摘されています。
また、ピロリ菌は公園の砂場や保育園の床にも存在したと言う報告があります。そこで遊んでいるうちに手から口に入って行くと言う可能性も考えられます。したがって、同じような生活環境で育った家族では感染する確率も高くなると考えられます。
日常生活でうつる?
大人同士の通常の生活(食事の共有、会話など)で感染する可能性は非常に低いとされています。ピロリ菌自体は、いろいろな場所に存在し、口から入ってくるリスクはありますが、大人の場合は免疫力があるため、一過性の胃炎(すぐに排除する)ことで終わることがほとんどです。過度に心配する必要はありません。
日本におけるピロリ菌感染率|年代で大きく異なります
日本のピロリ菌感染率は、年齢によって大きな差があります。
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・70代以上:約70〜80%
・60代:約60%
・50代:約40〜50%
・40代:約30%前後
・30代以下:10%未満
これは、日本の上下水道整備や衛生環境の改善が大きく影響しています。若い世代では感染率が低下していますが、40歳以上の方は一度も検査を受けたことがなければ感染している可能性が十分にあります。
ピロリ菌感染の症状|症状がない人も多い
ピロリ菌に感染していても、無症状の方が非常に多いのが特徴です。一方で、以下のような症状が出ることもあります。
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・胃もたれ
・胃の不快感
・みぞおちの痛み
・胸やけ
・吐き気
これらの症状が長く続く場合、単なる「胃の調子が悪い」で済ませず、検査を受けることが重要です。
筆者自身もピロリ菌に感染していましたが、特に症状はありませんでした。偶然検査で陽性が指摘され、その後家族を調べると、兄弟に全員がピロリ菌陽性と判明しました。
ピロリ菌を放置するとどうなる?|胃がんとの関係
ピロリ菌は一旦胃の中に入ると、基本的には自然に排除されることなく、ゆっくりと胃炎が進行します。ピロリ菌感染が長期間続くと、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こり、次第に胃の粘膜の萎縮が進行します(萎縮性胃炎:粘膜の下がなくなり、ざらざらになること)。
萎縮性胃炎が進むと、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、腸上皮化生、胃がんといった病気のリスクが高まります。
胃がんの原因の95%はピロリ菌と考えられています。もちろんピロリ菌が感染すると、必ずしも胃がんが起こるわけではありません。ピロリ菌感染者のうち胃がん発生率は5%程度と言われています。
重要なのは、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生リスクを約3分の1〜2分の1に低下させられることが分かっている点です。ただし、除菌後もリスクがゼロになるわけではないため、定期的な胃カメラ検査が必要です。
ピロリ菌の診断方法|最も正確なのは胃カメラ
主な検査方法
ピロリ菌の検査にはいくつか方法があります。大きく胃カメラを使って調べる方法と胃カメラを使わないで調べる方法があります。
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胃カメラ検査を使う方法
①迅速ウレアーゼ法
②培養検査
③鏡検法 - 胃カメラを使わない方法
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④尿素呼気試験
⑤便中抗原検査
⑥血液、尿中抗体検査 -
それぞれにメリットとデメリットがあります。以下に主なものを解説します。
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①ウレアーゼ法は胃カメラと一緒に行えるため、よく用いられる検査方法です。ただし胃薬(制酸剤)を飲んでいると、ピロリ菌の活動性が抑えられ検査結果が間違って陰性と出ることがあります(偽陰性)。制酸剤を2週間休薬する必要があります。
- ④尿素呼気試験は、非侵襲的な方法で、除菌後の判定によく用いられます。注意点は①同様、胃薬を飲んでいると陰性となる可能性があります。制酸剤を2週間休薬する必要があります。
⑤便検査は、ピロリ菌の抗原を調べるため、胃薬の影響は受けません。胃薬を飲む必要がある(休薬できない場合)はよく用いられます。ヘリコバクター学会でも除菌の判定効果には尿素呼気試験または便検査が推奨されています。
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⑥血液抗体検査は、血液検査で容易に調べることができるため、人間ドックなどでよく用いられています。しかし抗体検査は注意が必要です。抗体は除菌後も体内に残るため陽性となります。除菌治療後の方の判定にはあまり用いるべきではありません。
また近年問題となっているのが、ピロリ菌に1度も感染していないのに、抗体の数字が高くなると言う現象が起こっています(検査方法が変わったため)。したがって偽陰性の方が多くなり、学会でも注意喚起されています。
なぜ胃カメラが重要?
胃カメラでは、ピロリ菌の有無のみならず、胃炎や萎縮の程度、胃潰瘍・胃がんの有無を同時に確認できるという大きなメリットがあります。
ピロリ菌の治療するためには必ず胃カメラをする必要があります。それはピロリ菌に感染している人は既に胃がんになっている可能性があるからです。治療する前に胃がんがないかを胃カメラで調べる必要があります(バリウムではダメです)。なぜなら、胃がんが起こっていた場合は、ピロリ菌を除菌したとしても、胃がんが進行するためです。胃カメラを受けずに除菌治療を行う事は保険で認められておらず、自費治療になります。
当院では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ検査を行っており、「楽に受けられた」「思っていたより辛くなかった」とのお声を多くいただいています。
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ピロリ菌の治療|除菌治療の流れ
一次除菌治療
ピロリ菌は細菌なので、治療は抗生剤を服用します。
胃酸を抑える薬と抗生物質2種類を7日間服用します。
一次除菌で、約9割の方は除菌に成功します。
二次除菌治療
一次除菌が不成功の場合、抗生物質を変更して再度1週間治療を行います。二次除菌まで含めると、約96%の方で除菌成功が期待できます。
二次除菌でも除菌できなかった場合、三次除菌等があります。二次除菌までは保険適用されますが、三次除菌以降は保険が適用されず自費診療となります。
一次、二次除菌の抗生剤ではペニシリン系が用いられます。ペニシリンアレルギーのある方は、保険適用の薬は適用されず自己診療となります。(専門クリニックにご相談ください。)
除菌治療の副作用|よくある症状と対処法
除菌治療中、以下のような副作用が起こることがあります。
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・下痢・軟便
・味覚異常(口の中が苦い)
・腹部膨満感
・軽い吐き気
多くは一時的で、治療終了後に改善します。症状が強い場合はご相談ください。
除菌治療中の注意点です。
一次除菌の間は禁煙してください。除菌効果が低下します。
二次除菌の間はアルコールは控えてください。二次除菌で用いられる抗生剤ではアルコールの代謝が抑えられるため、激しい吐き気やめまいが起こることがあります。
除菌後に大切なこと|成功判定と定期検査
除菌治療後は、必ず除菌判定検査を行います。自己判断で「治った」と思い込むのは危険です。
また、除菌が成功しても、萎縮性胃炎がある方は年1回程度の胃カメラ検査が推奨されます。ピロリ菌は2歳から5歳の間に感染し慢性炎を起こしています。除菌するまでの間に既に長い間の慢性炎が起こっています。除菌することによって、それ以上の胃炎の進行は抑えられますが、それまでに起こってしまった胃炎は元に戻るわけではありません。
つまり除菌後も、慢性胃炎から胃を起こすリスクは残っているのです。定期的に胃カメラを受けることで、胃がんの早期発見につながります。
当院のピロリ菌検査・胃カメラの特徴
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☑️経験豊富な消化器内科医が担当
☑️鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査
☑️土曜日の検査対応
☑️ヘリコバクター学会認定医による診察
「胃カメラが怖い」「以前つらかった」という方も、安心してご相談ください。
👉 ピロリ菌が気になる方、40歳を過ぎて一度も胃カメラを受けていない方は、早めの検査をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. ピロリ菌検査は胃カメラなしでもできますか?
可能ですが、胃の状態まで確認できる胃カメラ検査が最もおすすめです。胃カメラを使って胃炎があった場合は保険が適応されます。胃カメラを使わないで検査する方法では自費検査となります。
Q2. ピロリ菌除菌は保険適用ですか?
胃カメラで胃炎や潰瘍が確認された場合、保険適用となります。胃カメラを使わない場合は、自費診療となります。
Q3. 除菌後に再感染することはありますか?
日本では再感染率は非常に低く、ほとんどありません。
Q4. 除菌すれば胃がんになりませんか?
リスクは下がりますがゼロにはならないため、定期検査が重要です。また早めの除菌を勧めます。(除菌治療は高校生以上からが保険適応になります)
Q5. 胃カメラは本当に楽に受けられますか?
当院では鎮静剤を使用し、多くの方が「眠っている間に終わった」と感じています。
院長監修コメント
本記事は、大阪本町胃腸内視鏡クリニック 院長・消化器内科専門医、ヘリコバクター認定医が、日々の診療経験と最新の医学的知見に基づいて監修しています。実際の診療現場では、「もっと早く検査を受けていればよかった」という声を多く耳にします。ピロリ菌は、正しく知り、正しく対処すれば将来の胃がんリスクを減らすことができます。
医療法人 幸生会
当法人では「大阪から胃がん、 大腸がんを撲滅する」 と目標に掲げています。森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック、大阪本町胃腸内視鏡クリニックともに 内視鏡専門クリニックです。 鎮静剤麻酔を使った楽な胃カメラ、鎮痛剤を使った痛くない大腸カメラを行っています。
消化器内視鏡専門医による高精度かつ苦痛の少ない内視鏡検査と診断によって、胃がんや大腸がんの早期発見と予防、撲滅を目指しています。
当法人では ピロリ学会認定医、 内視鏡学会専門医が在籍しています。
【森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック】
2016年に開業し、年間約4000件の内視鏡検査を行っています。
JR森ノ宮駅直結、地下鉄森ノ宮駅から徒歩3分 ビエラ森ノ宮3階
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【大阪本町胃腸内視鏡クリニック】
2022年に開業し、年間4000件の内視鏡検査を行っています。
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