ピロリ菌の除菌治療とは?成功率・副作用・治療の流れを専門医が解説
「ピロリ菌」この言葉を知っている方も多いと思います。
胃の中に住みつく細菌であるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となることが知られています。日本では中高年の方を中心に感染率が高く、40代以上では約半数が感染しているともいわれています。ピロリ菌は自然に消えることはほとんどなく、薬による除菌治療が必要です。近年では除菌治療の成功率も高く、比較的短期間で治療が可能になっています。
この記事では
・ピロリ菌の除菌治療とは
・治療の流れ
・成功率
・副作用
・除菌後の注意点
について、消化器内視鏡専門医の視点からわかりやすく解説します。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリ菌と呼ばれる細菌で、幼少期2歳から5歳の間に、口から入り胃の粘膜に感染します。
通常、胃の中は強い胃酸があるため細菌は生きられません。しかしピロリ菌は特殊な酵素(尿素を分解し、アルカリ性であるアンモニアを合成することで胃酸と中和させる)を持っており、胃酸の中でも生存することができます。
ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こります。これを慢性胃炎と呼びます。この炎症が長期間続くことで、以下のような病気の原因になります。
ピロリ菌が関係する病気
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・慢性胃炎
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・胃ポリープ(過形成ポリープ)
・胃MALTリンパ腫
・胃がん、腺腫
特に胃がんの最大の原因はピロリ菌感染といわれており、日本では重要な問題となっています。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌の除菌治療とは、抗生物質と胃酸を抑える薬を使ってピロリ菌を殺菌する治療です。1週間の内服(2種類の抗生剤と制酸剤)で治療が可能です。
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一次除菌治療で使用する薬
①胃酸を抑える薬(P-CAB)
②抗生物質(アモキシシリン)
③抗生物質(クラリスロマイシン) - 一次除菌の間は禁煙してください。(喫煙すると除菌率が下がります)
- 一次除菌で除菌できなかった場合、二次除菌を行います。
- 二次除菌治療で使用する薬
①胃酸を抑える薬(P-CAB)
②抗生物質(アモキシシリン)
③抗生物質(メトロニダゾール) - 二次除菌の間は、アルコールは控えてください。
メトロニダゾールを内服した状態で飲酒すると、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドが分解できず、強い吐き気やめまいを生じることがあります。 - (時々ネットで「飲酒している人は除菌治療ができない」と書いているものがありますが、正確には二次除菌ができないのであり、一次除菌は可能です)
一次除菌や二次除菌は保険が適用されます。二次除菌治療でも除菌できなかった場合には三次除菌等がありますが、これらは保険が適用されず自費診療となります。
またペニシリンアレルギーの方は、一次、二次除菌治療に含まれるアモキシシリンが使用できません。そのため自費診療のアモキシシリンを使わない治療法を用いる必要があります。
当院ではピロリ菌専門外来も行っており、またピロリ学会認定医による診察で、自費診療の除菌治療についても積極的に行っています。これまでの治療でうまくいかなかった方や、専門医による診療を希望される方は、ご気軽に相談ください。
費用について
ピロリ菌の除菌治療は保険が適用される場合、5000円程度です。また除菌判定検査も3000円程度でできます。
自費診療の場合は保険が適用されず、除菌治療薬が10000〜20000円、除菌判定検査が5000円〜10,000円程度かかります。
ピロリ菌除菌治療の成功率
ピロリ菌除菌の成功率は比較的高く、現在では1回目の除菌成功率は約70〜90%といわれています。
もし1回目の治療で除菌できなかった場合は、抗生剤を変更して2次除菌を行います。2次除菌まで行うと95%以上の人で除菌が成功します。
ピロリ菌除菌治療の副作用
除菌治療は安全性の高い治療ですが、薬の副作用が起こることがあります。主な副作用は以下です。
主な副作用
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・下痢や軟便
・味覚異常(舌先に苦味を感じる)
・腹部不快感
・発疹(体の一部、または全身に発疹ができる)
これらの副作用の多くは軽度で自然に改善します。しかし以下の症状がある場合は医療機関へ相談してください。
・強い下痢
・発熱
・ひどいじんましん
・強い腹痛
・血便
除菌治療の流れ
ピロリ菌の除菌治療は、一般的に次の流れで行われます。
① ピロリ菌の検査
まずピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。主な検査方法には、尿素呼気試験、血液検査、便検査、胃カメラ検査があります。
この中でも推奨される検査は胃カメラ検査で行う検査(ウレアーゼ法)です。胃カメラでは、ピロリ菌感染の有無の他に、胃炎の程度、胃がんの有無を同時に確認することができます。
また、胃カメラを使わずにピロリ菌の検査をする場合は保険が適用されず、自費検査となります。(ピロリ菌の検査及び治療する前には、胃カメラで胃がんが発生していないことを確認する必要があります。)
② 除菌治療(1週間)
薬を1週間服用します。
③ 除菌判定検査
薬を飲み終えてから1〜6ヶ月後に除菌判定を行います。一般的には尿素呼気試験や便抗原検査で確認します。(胃カメラや血液検査での判定は、ピロリ学会では推奨されていません)
時々、除菌薬を飲んだまま判定検査をしていない方がおられます。100%除菌できるわけではありませんので、除菌できたかどうかまでしっかり調べることが大事です。
ピロリ菌を除菌するメリット
ピロリ菌を除菌することで、以下のメリットがあります。
・胃がんのリスクを下げる
ピロリ菌は胃がんの最大の原因です。除菌することで胃がんリスクを約3分の1程度に減らすといわれています。
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発予防
ピロリ菌がいると、潰瘍が何度も再発します。除菌することで再発率が大きく下がります。
・胃炎の改善
慢性的な胃炎が改善し、胃の不快感、胃もたれなどが改善することもあります。
除菌後も胃カメラが重要な理由
ピロリ菌を除菌しても、胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません。特に長期間ピロリ菌に感染していた人、萎縮性胃炎がある人では、除菌後も胃がんが発生する可能性があります。そのため年1回程度の胃カメラ検査が推奨されています。
早期に胃がんを発見できれば、内視鏡治療で完治する可能性が高くなります。
当院の内視鏡検査の特徴
大阪本町胃腸内視鏡クリニックでは、患者さんの負担をできるだけ減らす内視鏡検査を行っています。
当院の特徴
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☑️鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ
☑️経験豊富な消化器内視鏡専門医による検査
☑️胃カメラとピロリ菌診断が同時に可能
☑️ピロリ学会認定による最新の知見に基づいた検査及び治療
胃の症状がある方や、ピロリ菌感染が心配な方は一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1 ピロリ菌の除菌治療は保険適用ですか?
→胃カメラで胃炎や胃潰瘍などが確認された場合、除菌治療は保険適用となります。
Q2 除菌治療は何回までできますか?
→一般的には2回まで保険診療で除菌治療を受けることができます。
Q3 除菌治療はつらいですか?
→多くの方は軽い副作用のみで治療を終えることができます。1週間薬を服用するだけなので、比較的負担の少ない治療です。
Q4 ピロリ菌は自然に治りますか?
→自然に消えることはほとんどありません。薬による除菌治療が必要です。
Q5 ピロリ菌がいると必ず胃がんになりますか?
→必ず胃がんになるわけではありませんが、胃がんの最大の原因とされています(胃がんの原因の95%がピロリ菌によると考えられています)。除菌することでリスクを下げることができます。
まとめ
ピロリ菌は胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因となる細菌です。しかし現在では1週間の薬を服用することで、高い除菌成功率で治療できる病気になっています。
また、ピロリ菌の感染や胃炎の状態を正確に確認するためには胃カメラ検査が重要です。胃の不調が続く方や、ピロリ菌感染が気になる方は、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。
監修
医療法人幸生会
大阪本町胃腸内視鏡クリニック
ピロリ菌学会認定医 院長 藤田 実
消化器内科・消化器内視鏡専門医
胃カメラ・大腸カメラ検査を専門に、胃がん・大腸がんの早期発見に力を入れています。











