ピロリ菌陽性と言われたらどうする?検査・治療・胃がんリスクを専門医が解説
健康診断や胃の検査で「ピロリ菌陽性です」と言われ、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の中に感染する細菌で、慢性胃炎や胃潰瘍、そして胃がんの原因となる細菌として知られています。しかし、現在ではピロリ菌は適切な治療で除菌できる感染症です。
そのため、ピロリ菌陽性と言われた場合は、正しく理解し適切な対応を取ることが重要です。
この記事では消化器内視鏡専門医の立場から
・ピロリ菌とは何か
・感染の原因
・胃がんとの関係
・除菌治療の方法
・除菌後に必要な検査
について詳しく解説します。
ピロリ菌とは
ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリ菌と呼ばれる細菌です。
胃の中は強い胃酸があるため、通常の細菌は生きることができません。しかしピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を使ってアンモニアを作り出し、胃酸を中和することで胃の中でも生き続けることができます。そして胃の粘膜に感染し、長期間炎症を引き起こします。
日本人とピロリ菌感染
日本では中高年を中心にピロリ菌感染者が多く存在します。感染率は世代によって大きく異なります。
年代別の感染率の目安
60代以上:約60〜70%
50代:約40〜50%
40代:約20〜30%
30代:約10〜20%
20代以下:約10%
若い世代では衛生環境の改善により感染率は減少していますが、40代以上ではまだ多くの方が感染しています。
ピロリ菌の感染経路
ピロリ菌は主に幼少期(2〜5歳)に感染します。感染経路は完全には解明されていませんが、主に以下が考えられています。
水を介した感染
昔は井戸水が主な原因だと言われていました。しかし現在は上下水道が整備されており、井戸水による感染はかなり低い人を考えられています。
また、井戸水だけでなく土の中にもピロリ菌が飛んでいると言われています。公園の砂場の中にピロリ菌がいたり、保育園の床にピロリ菌がいたと言う報告もあります。つまり同じ生活環境で育った場合、同じようにピロリ菌に感染する可能性が高いと考えられます。
口からの感染
家族間での食べ物の口移しなどが原因と考えられています。データでは母親が陽性の場合、父親が陽性の場合に比べ7倍感染率が高いと言われています。今でも育児の中心は母親であり、母親が感染していると子供に移りやすいと考えられます。
ピロリ菌陽性とはどういう状態?
ピロリ菌陽性とは胃の中にピロリ菌が感染している状態を意味します。多くの場合、感染しても症状はほとんどありません。しかし、胃の粘膜では長期間炎症が続きます。この慢性的な炎症が長く続くと、胃の粘膜が徐々に変化していきます。具体的には胃粘膜のひだが、徐々に少なくなり、表面がざらざらになります。これを「萎縮性胃炎」と呼びます。
萎縮性胃炎が進行すると、胃がんが発生するリスクが高くなります。
ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌は胃がんの最大の原因とされています。日本の胃がんの多くはピロリ菌感染が関係しています。(胃がんの原因の95%がピロリ菌と考えられています)
ピロリ菌感染による胃がん発生の流れは次の通りです。
ピロリ菌感染
↓
慢性胃炎
↓
萎縮性胃炎
↓
腸上皮化生
↓
胃がん
このように、長期間の炎症によって胃の粘膜が変化し、がんが発生します。そのためピロリ菌を除菌することが胃がん予防につながります。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌を調べる方法はいくつかあります。主な検査は以下です。
①胃カメラ検査(ウレアーゼ法)
胃カメラでは胃の粘膜の状態を直接確認できます。ピロリ菌感染の特徴的な胃炎を診断でき、組織検査も可能です。胃がんの早期発見にもつながるため、最も重要な検査です。
②尿素呼気試験
息を吐くだけでピロリ菌感染を調べる検査です。精度が高く、除菌判定にも使用されます。
③血液検査
ピロリ菌の抗体を調べます。血液検査で行われるため、人間ドックなどで採用されています。過去の感染でも陽性になる場合があります。
④便検査
便中のピロリ菌抗原を検出します。
「ピロリ菌陽性」の注意点
ここで近年問題になっていることがあります。それはピロリ菌検査の「偽陽性」の問題です。実際にピロリ菌に感染していないのに、ピロリ菌の結果が陽性と出ることがあります。これは特に人間ドックなどで行われるピロリ血液抗体検査で問題となっています。
抗体とは、ピロリ菌のような外部からの侵入した菌やウィルスに対して体が作り出す免疫タンパク質のことです。ピロリ菌に感染すると、この抗体が賛成されます。
ピロリ菌を抗生剤で除菌した場合、菌がいなくなっても抗体は陽性になります。除菌治療だけでなく、たまたま別の病気(例えば虫歯や気管支炎など)で抗生剤を使用して、ピロリ菌が消えてしまい、抗体だけのケースがあります。つまり現在はピロリ菌に感染していない状態です。
そしてさらに問題となっているのが、ピロリ菌の抗体検査方法が2023年頃より変更され、これまでピロリ菌に全く感染していないのに抗体の数値だけ高くなる(陽性と診断)されるケースが増えていると言うことです。
ピロリ学会でもこの事は問題視され、ピロリ菌抗体が陽性と言うだけで、ピロリ菌の除菌をしないように(別の検査方法でピロリ菌が陽性であることを確認する必要がある)と言われています。
ピロリ菌陽性と言われたらまずすること
ピロリ菌陽性と言われた場合、まず重要なのは胃カメラ検査です。その理由は以下です。
胃炎の程度を確認できる
ピロリ菌感染による胃炎の進行度を確認できます。もしピロリ抗体が陽性なのに活動性胃炎の所見がない場合は、ピロリ菌の別の検査を行うことがあります。
胃がんの有無を確認できる
胃がんは症状がないことが多いため、胃カメラでの確認が重要です。
胃がんがあるかないかを知る唯一の検査が胃カメラです。またピロリ菌の除菌を治療するためには、胃カメラで胃がんが起こっていないことを確認する必要があります。(胃がんがあれば除菌治療よりも胃がん治療が優先されます。)
胃カメラを行わない場合、ピロリ菌の除菌治療は保険が適用されません。
ピロリ菌の除菌治療とは
ピロリ菌の除菌治療は3種類の薬を1週間服用する治療です。
ピロリ菌の除菌治療について、詳しくはこちらのブログを参照ください→ピロリ菌の除菌治療について
除菌後に必要な検査
薬を飲み終わったあと、1〜6ヶ月開けて除菌判定を行います。一般的には尿素呼気試験または便検査で確認します。(ガイドラインで推奨)
除菌後も胃カメラが必要な理由
ピロリ菌を除菌しても、胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません。特に萎縮性胃炎が進行していた場合、胃がんリスクが残ります。そのため年1回程度の胃カメラ検査が推奨されます。
当院の胃カメラ検査の特徴
大阪本町胃腸内視鏡クリニックでは、患者さんの負担をできるだけ減らす内視鏡検査を行っています。
当院の特徴
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☑️鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ
☑️消化器内視鏡専門医による検査
☑️ピロリ菌専門外来(ピロリ学会認定医による専門外来)
ピロリ菌陽性と言われた方は、胃の状態を確認するためにも一度胃カメラ検査をおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1 ピロリ菌陽性は危険ですか?
すぐに危険というわけではありませんが、胃炎や胃がんの原因になるため除菌治療が推奨されます。
Q2 ピロリ菌は自然に治りますか?
自然に消えることはほとんどありません。薬による除菌治療が必要です。
Q3 除菌治療はつらいですか?
1週間薬を飲むだけの治療で、多くの方は問題なく治療を終えることができます。
Q4 除菌したら胃がんになりませんか?
胃がんリスクは下がりますがゼロにはなりません。定期的な胃カメラ検査が重要です。
Q5 家族にうつりますか?
成人同士での感染はほとんどありません。多くは幼少期に感染します。
まとめ
ピロリ菌陽性と言われた場合、胃カメラ検査で胃がんがないか、ピロリ菌に現在感染しているのかどうか、除菌治療を行うことが重要です。
ピロリ菌は胃がんの最大の原因ですが、適切に除菌することでリスクを下げることができます。
胃の健康を守るためにも、ピロリ菌陽性と言われた方は早めに専門医へ相談することをおすすめします。
監修
医療法人幸生会
大阪本町胃腸内視鏡クリニック
消化器内科・消化器内視鏡専門医
ピロリ感染症認定医
胃カメラ・大腸カメラ検査を専門に、胃がん・大腸がんの早期発見に力を入れています。苦痛の少ない内視鏡検査を提供しています。











