はじめに
本記事は【大阪本町胃腸内視鏡クリニック】消化器内科・内視鏡専門医である院長が監修し、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)について、患者さんやご家族が正しく理解し、安心して治療に臨めるよう作成しています。最新の医学的知見と臨床経験に基づき、専門的な内容をできるだけ分かりやすく解説します。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる原因不明の炎症性腸疾患(IBD)の一つで、日本では厚生労働省の指定難病に認定されています。
主に直腸から連続的に炎症が広がるのが特徴で、寛解(症状が落ち着いた状態)と再燃(悪化)を繰り返しながら長期経過をたどります。
近年、日本でも患者数は増加しており、若年層から中高年まで幅広い年代で発症します。2023年の全国調査では約31.7万人のかたが罹患されていると推計されています。
潰瘍性大腸炎の主な症状
代表的な症状
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☑️血便・粘血便
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☑️下痢(1日数回〜10回以上)
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☑️腹痛・腹部不快感
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☑️便意切迫感(急に強い便意を感じる)
全身症状
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☑️発熱
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☑️体重減少
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☑️貧血
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☑️倦怠感
重症時の症状
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☑️激しい腹痛
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☑️大量下血
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☑️脱水
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☑️栄養障害
症状の強さは炎症の範囲や重症度によって大きく異なります。
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複雑に関与していると考えられています。
⚫︎免疫異常
本来、体を守る免疫が腸の粘膜を誤って攻撃してしまう自己免疫的な異常。
⚫︎遺伝的要因
家族内発症がみられることがあり、遺伝的素因が関与するとされています。
⚫︎環境要因
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食生活の欧米化
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⚫︎ストレス
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⚫︎腸内細菌叢の変化
潰瘍性大腸炎の診断
問診・診察・検査
症状の経過、血便の有無、家族歴などを詳しく確認します。
最終的に診断をつけるには、大腸カメラが最も有用な検査です。大腸カメラで炎症の有無やその程度、範囲、組織検査にて診断を行います。感染性胃腸炎との鑑別のため、便培養検査を行うこともあります。
大腸カメラを行うことで、大腸がんやポリープなどの腫瘍がないかも調べることが可能です。
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血液検査にて炎症反応(白血球やCR P)の有無や、貧血の程度を調べます。栄養状態の評価のため、タンパク質やアルブミンの数値を測定します。
当院では鎮静剤を用いた苦痛の少ない大腸内視鏡検査を行っています。
潰瘍性大腸炎の重症度分類
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①軽症
②中等症
③重症
潰瘍性大腸炎の重症度分類は、主に排便回数、血便の程度、発熱(37.5度以上)、頻脈(毎分90回以上)、貧血(Hb10g/dL以下)、赤沈の6つの臨床項目を基準に、軽症、中等症、重症の3段階で評価されます。
これらの項目に基づき、総合的に判断し、治療方針を決定します。
潰瘍性大腸炎の治療
治療の基本目標は「炎症を速やかに抑えて症状を改善する寛解導入」と「再燃を防ぎ、良好な状態を維持する寛解維持」です。病気の重症度、炎症の範囲、これまでの治療反応性を踏まえて治療薬を選択します。
🔳5-ASA製剤
5-ASA製剤は、潰瘍性大腸炎治療の基本となる薬剤で、軽症から中等症の患者さんに広く使用されます。腸の粘膜で炎症を抑える作用があり、長期使用でも比較的安全性が高いことが特徴です。
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(薬剤名)メサラジン(ペンタサ®、アサコール®、リアルダ®
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(投与方法)内服薬/坐薬・注腸(直腸炎型や左側大腸炎型に有効)
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(特徴と注意点)
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・寛解導入・寛解維持の両方に使用
・自己判断で中止すると再燃リスクが高まる(きちんと薬を続けることが重要です)
・まれに腎機能障害や薬疹が起こるため定期的な血液検査が必要
🔳ステロイド
ステロイドは強力な抗炎症作用を持ち、中等症から重症の寛解導入に使用されます。症状を短期間で改善させる効果がありますが、長期使用は副作用のリスクが高いため注意が必要です。
(主な薬剤)プレドニゾロン、ブデソニド(局所作用型)
(特徴と注意点)
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・寛解導入のみで使用(維持には副作用のためステロイドの長期使用は注意が必要です)
・長期使用により骨粗鬆症、感染症、糖尿病などの副作用
・症状改善後は計画的に減量・中止
🔳免疫調節薬
免疫調節薬は、再燃を繰り返す患者さんやステロイド依存例に使用され、寛解維持を目的とします。
(主な薬剤)アザチオプリン、6-メルカプトプリン
(特徴と注意点)
・効果発現まで数週間〜数か月かかる
・骨髄抑制、肝機能障害の可能性(定期的な血液検査が必須)
🔳生物学的製剤
生物学的製剤は、炎症に関与する特定の分子を標的とした治療で、中等症〜重症例に用いられます。
(抗TNFα阻害薬)インフリキシマブ(レミケード®)アダリムマブ(ヒュミラ®)ゴリムマブ(シンポニー®)
炎症性サイトカインTNFαを抑制し、高い治療効果を示します。
(抗I Lー12/23抗体)ウステキヌマブ(ステラーラ®)
(抗α4β7インテグリン抗体)ベドリズマブ(エンタイビオ®)
腸管選択的に作用し、全身副作用が比較的少ないのが特徴です。
🔳JAK阻害薬
JAK阻害薬は比較的新しい経口治療薬で、免疫細胞内のシグナル伝達を抑制することで炎症を抑えます。
(主な薬剤)トファシチニブ、フィルゴチニブ
(特徴と注意点)
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・注射が不要な内服薬
・効果発現が比較的早い
・感染症や血栓症リスクに注意が必要
・経口薬として使用される新しい治療選択肢。
🔳外科手術
潰瘍性大腸炎は基本的に薬による内科治療でコントロールする病気ですが、すべての患者さんが薬だけで安定するわけではありません。薬が十分に効かない場合や、命に関わる合併症が起こった場合には、外科手術が必要になることがあります。
外科治療が必要になる主なケース
① 内科治療でコントロールできない場合
5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを使用しても再燃を繰り返す、あるいは症状が改善しない重症例では手術が検討されます。
② ステロイド依存・副作用が強い場合
ステロイドを減量するとすぐに再燃する「ステロイド依存例」や、感染症・骨粗鬆症などの副作用が問題となる場合も手術適応になります。
③ 重篤な合併症が起こった場合
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・大量出血
・中毒性巨大結腸症
・大腸穿孔(大腸に穴が空いて、腹腔内に細菌感染)
これらは緊急手術が必要となる危険な状態です。
④ 大腸がん・高度異形成が見つかった場合
長期間潰瘍性大腸炎を患っていると、大腸がんのリスクが上昇します。がんや前がん病変が見つかった場合、予防的に大腸切除を行うことがあります。
外科手術の内容
潰瘍性大腸炎の手術では、炎症の原因となる大腸を切除することが基本です。代表的なのが大腸全摘+回腸嚢肛門吻合術(J-pouch手術) です。
これは小腸(回腸)で便をためる袋を作り、肛門とつなぐ方法で、人工肛門を避けられる可能性があります。状態によっては一時的に人工肛門を造設し、後日閉鎖することもあります。
外科治療のメリット・デメリット
メリット
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・潰瘍性大腸炎そのものは根治が可能
・薬による副作用や再燃の不安から解放される
デメリット
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・排便回数が増えることがある
・手術合併症のリスク
食事の注意点
寛解期:基本的には食事の制限はありません
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・バランスの良い食事
・過度な制限は不要
再燃期
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・低脂肪・低刺激
・アルコール・香辛料を控える
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再燃する人の特徴・よくある失敗
潰瘍性大腸炎は「寛解している期間をいかに長く保つか」が治療の最大の目標です。実臨床では、再燃を繰り返す患者さんにはいくつか共通した特徴や、無意識のうちに行っている“失敗パターン”があります。
再燃しやすい人の特徴
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①症状が落ち着くと自己判断で薬を中断する。
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最も多い再燃原因です。血便や下痢が治まると「もう治った」と感じ、5-ASA製剤などの内服を中止してしまうケースが少なくありません。しかし、腸の粘膜では自覚症状がなくても炎症が残っていることが多く、服薬中断により再燃リスクが大きく高まります。
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②定期通院、検査を受けていない
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症状がない期間でも、定期的な血液検査や大腸内視鏡検査による評価が重要です。自覚症状だけでは病状を正確に把握できず、「気づいたときには再燃していた」というケースが多くみられます。
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③ストレスや生活リズムの乱れが続いている。
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ストレスは直接の原因ではありませんが、自律神経や免疫バランスに影響し、再燃の引き金となることがあります。睡眠不足、不規則な食事、過労が重なると再燃しやすくなります。
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④再発の初期サインを見逃している。
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便が少し緩くなる、粘液が増える、残便感が出るなどは再燃の初期症状であることがあります。これらを「一時的な体調不良」と自己判断し、受診が遅れると悪化しやすくなります。
よくある失敗パターン
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①市販薬や民間療法に頼りすぎる
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下痢止めや整腸剤、市販サプリメントのみで様子を見ることは、炎症を悪化させる可能性があります。潰瘍性大腸炎は炎症性疾患であり、医学的治療が基本です。
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②食事制限を過度に行う(偏った食生活)
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インターネット情報を参考に、極端な食事制限を行う方がいますが、栄養不足は体力・免疫力の低下につながります。再燃予防には「無理のない、続けられる食事」が重要です。
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③医師に症状を正確に伝えていない
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「これくらいなら大丈夫」と軽く考え、血便の回数や下痢の頻度を正確に伝えないケースがあります。正確な情報共有が適切な治療選択につながります。
再燃を防ぐために大切なポイント
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・症状がなくても処方された薬を継続する
・少しでも便通や便性状に変化があれば早めに受診する
・定期的な大腸内視鏡検査で炎症の有無を確認する
・無理のない生活リズムを心がける
これらを守ることで、再燃リスクを大きく下げることが可能です。
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潰瘍性大腸炎と大腸がん
長期罹患例では大腸がんリスクが上昇するため、定期的なサーベイランス内視鏡が重要です。
潰瘍性大腸炎は、発症からの期間が長くなるほど大腸がんのリスクが高くなることが知られています。特に発症後8〜10年以上経過した全大腸炎型や左側大腸炎型では注意が必要です。慢性的な炎症が続くことで大腸粘膜に変化が起こり、がんや前がん病変(異形成)が発生しやすくなります。そのため、症状が安定していても、治療を継続すること、**定期的な大腸内視鏡検査(サーベイランス内視鏡)**が重要です。早期に発見できれば、治療の選択肢が広がり、予後の改善につながります。
難病医療費助成制度(指定難病申請)
潰瘍性大腸炎は指定難病であり、条件を満たせば医療費助成が受けられます。
申請の流れ
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診断書作成(指定医)→市区町村窓口へ申請→受給者証交付
当院では診断書作成にも対応しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 潰瘍性大腸炎は完治しますか?
現在は完治は難しいですが、寛解を長期維持することが可能です。
Q2. 大腸カメラは必ず必要ですか?
正確な診断と経過観察に不可欠です。
Q3. 食事で治せますか?
食事療法は補助的役割で、薬物療法が基本です。
Q4. 妊娠・出産は可能ですか?
多くの場合可能ですが、主治医との相談が重要です。計画的な妊娠を心がけましょう。
Q5. ストレスは関係ありますか?
直接の原因ではありませんが、再燃のきっかけになることがあります。
まとめ
潰瘍性大腸炎は長期的な管理が必要な病気ですが、適切な治療と定期検査により、日常生活を維持することが可能です。血便や慢性的な下痢がある方は、早めに消化器内科を受診しましょう。
監修者情報
大阪本町胃腸内視鏡クリニック 消化器内科・内視鏡専門医 ※本記事は医学的根拠に基づき作成しています。
血便・下痢・腹痛でお悩みの方は、大阪本町胃腸内視鏡クリニック/森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックまでお気軽にご相談ください。
当法人では「大阪から胃がん、 大腸がんを撲滅する」 と目標に掲げています。
森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック、大阪本町胃腸内視鏡クリニックともに 内視鏡専門クリニックです。 鎮静剤麻酔を使った楽な胃カメラ、鎮痛剤を使った痛くない大腸カメラを行っています。
消化器内視鏡専門医による高精度かつ苦痛の少ない内視鏡検査と診断によって、胃がんや大腸がんの早期発見と予防、撲滅を目指しています。
当法人では 内視鏡学会専門医が在籍しています。
【森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック】
2016年に開業し、年間約4000件の内視鏡検査を行っています。
JR森ノ宮駅直結、地下鉄森ノ宮駅から徒歩3分 ビエラ森ノ宮3階
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【大阪本町胃腸内視鏡クリニック】
2022年に開業し、年間4000件の内視鏡検査を行っています。
内視鏡検査や診察は全て完全予約制です。
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ホームページ:https://www.morinomiya-naishikyo.com/osaka_hommachi/
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